Yoshiki Kato 加藤雅己
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手術記   2006.8月 東京歯科大学市川総合病院にて

 8月7日(月)

 いよいよ今日から入院。入院自体これで4回目。まあ、馴れたもので、 特に不安なし!
部屋は4人部屋。東613号室。
向かいのベッドも今日からの入院でまったく 同じ手術らしい。年齢も一見同じ位だし・・・。
今日は手術の説明だけで、特にやることなし!
とりあえずどんなかわいい看護師さんがいるか、大いに期待しましょ。


8月8日(火)
 病室の朝は 早い!でもその前に起きてしまい、5時くらいにタバコを吸いに外へ散歩。今日は午後脊髄造影検査 のため、朝から点滴針を。やっと入院患者らしくなってきた。6日の日曜日今シーズン最後?!の ソフトボール試合があり、日焼けと筋肉痛でおよそらしからぬ風貌だったので・・・。 いよいよ脊髄へ注射!
どんなにか苦痛と思っていたらさほど・・・のことなかったかな・・・。
  何しろ前回入院の腎生検、腰から左腎臓めがけて細いストロー大の針をさされた時は (学生時代は柔道部でした?級の腕っ節の先生に馬乗りにされて)矢鴨と串にさされるうなぎの気持ちが良くわかった!!
それに比べりゃチョロイもんでしたねー!!


8月9日(水)
 手術前日。
最後説明の時、「手術やりますか?どうしますか?」と聞かれる。それほど、症状が軽く・・・と言う よりはまったくない状態!
 流石のスーパードクター白石先生も症状のまったくない人の手術、 しかも「ピアニスト」という人種の手術ははじめてだそうで、やりにくい!とのこと。ただ検査の結果 からも100%確実に将来悪化すること、悪化してからオペしてもどこまで回復できるかわからない (ピアニストとして)ことから手術することを決断した!



8月10日(木)
 ついに当日!! 手術そのものに不安は無いものの、全身麻酔が不安!!ハンブルグ時代からの親友で優秀な麻酔科医の 草谷氏ならともかく、ちゃんとかかるのか・・・?途中で切れないか・・・?本当に目覚めるのか・・・?
  AM9時、3F手術室の前で礼子と義母に手を振った後、歩いて中へ。ベッドに寝かされ、心電図、血圧計 その他もろもろつけられたあとに、「それではこれから麻酔のお薬入いりますからね〜、入った瞬間 少しピリピリしますけど、すぐに眠くなりますから・・・では、入れま〜す」の声を聞いたと同時に右手 が破裂しそうな痛み!!!「右手が痛い!」と言おうとした!いや確かに言った!・・・が言ったのは 5時間以上後に起こされた時だった。自分の感覚では、薬か注入され、痛いというまではわずか1〜2 秒しかたっていないはずなのに・・・。2時半過ぎ、病室に戻る。その時から地獄のような時間が・・・。 頭・首・肩は全く動かず、どころか、鋼鉄がはめ込まれたような重さと痛さ!動かせるのは手と足だけ! しかし、右手は相変わらず破裂しそうな感覚!!でもなぜかピアノが弾けないのではという気はしていない!?。それに不思議と1ヶ月もすれば、ソフトボールだってできるのでは・・・という気さえしている。

 でもこの例えようのないかつて経験したことのない痛み!
こういう時の時間の流れはどおして遅いのか
さっきは1〜2秒で5時間たったじゃないか!寝ようと思っても眠れない!まだ夜になったばかり!



8月11日(金)
 やっと12時をまわったが、朝にはほど遠い。時々看護師さんが血栓きチューブから出血 した血を栓きにくる・・・!!
・・・地獄のような16時間。やっと起床の時を迎え、看護師さんの 「起き上がってみます?」の声にまず左を下に、横向きに・・!なんじゃこの体は!!動かない。再度 トライ!・・やっと横向きに。ひと休みして次はベッドの上にすわる形に。手助けと共に横向きにから 左ひじをついて、頭を持ち上げる・・・はずが上がらない!!看護師さんに抱きかかえられながらやっと ベッドに座る。とたんに全頭の重量が首へ。うっ、俺の頭ってこんなに重かったのか・・・!?(確かに 顔はでかいが)
「だめ、横になる!」と言ってかかえられて寝かせてもらう。
「次の日から立って歩ける から・・」白石先生のことば!
うそだ!ーーーーーーーーー歩けるなんて10年先だ!朝食に重湯と具なし味噌汁を飲ませて もらう。うまい!!本当に米一粒も入っていないのに・・・うまい・・・完食。人間生きて口から物を 食すことがこんなに幸せなことか痛感! 昼前に小水のチューブを栓いてもらう。昼になり、ようやく一人で座れるようになった。相変わらず 鋼鉄入り。昼食のおかゆがまた格別にうまかったこと!もち完食。
あまりにもおかゆが美味しかった ので夕食もおかゆにしてもらった。午後恐る恐る立って歩いてみた。歩けた!やはり白石先生の 言葉は正しかった!!


8月12日(土)

首肩に鋼鉄がはまっているものの、朝からスッキリ目覚め 歩いてトイレにも行けた。上下左右まったく動かず。
と同時にいまだかつて経験のないほどの肩こり!


8月13日(日)

 昨夜は肩こりもひどくあまり眠れず。しかし体はだいぶ楽になってきた。起きること、 歩くことに何の抵抗もなく肩から上がなければソフトだってできそう・・・?


8月14日(月)
 リハビリ に呼ばれた。・・・リハビリ?
俺は脳梗塞で倒れたわけでも、大ケガで担ぎ込まれたわけでもないぞ!と  思いながら、しぶしぶリハビリセンターへ。

 案の定それらしき方々がうつろな目で・・(少なくとも 中に入った時はそう見えた)車椅子のままおはじきを箱の中へ入れたり出したり・・・、足踏みしたり ・・・。中にはだいぶ元気になられたのか本当に単純な動作に汗だくでもくもくと繰り返している人・・ 等々。
 俺にここで何をやれというの?俺にとってのリハビリはピアノを弾くこと。日曜のソフトが早く できるようになること!
 いろいろ問診の後、トレーニングベッドにあお向けで竹の棒を伸ばしたり 、曲げたり・・・上下左右に手を伸ばしたままでたおす・・・。

 いいかげんいやになってきて片手で やっていたら「軽すぎましたか?。筋肉質ですもんね。」と500g追加。等々数種類の単純動作の後 、部屋の一番すみにある、電気マッサージの場所へ。一人ポツンと椅子に座り、部屋中の人たちのやっ ている姿、指導している先生方の姿をみているうちに、たいへんな間違えに気づいた!この人たちは、 やらされているのではなく、もとの機能を必死で取り戻そうとしているのだ。それを先生方は根気よく 見守りながら時に笑顔で厳しく、笑顔で優しく、指導されているのだ。

  病気をしたり、けがをした者にとって、外科的・内科的治療はとても大事なこと。
しかしその後、治りたい!治ろう!とする精神力はもっと大切であり、ずっと持続させていないといけない長期戦だ!
リハビリとは単に体の機能を回復させるだけでなく、その根底にある精神力をつけることなのかもしれない!
なんかピアノの指導とも似ているかも・・・・・・
う〜んあなどるべからず、単純動作の中に底知れぬ奥深さがありそうだ
・・・・リハビリ・・・・

8/16 (水)
 
 不思議な夢を見た。
ドイツのどこか小さな町を、馬車に乗って、旅をしている。しかも何と、師匠のハンゼンとあのフルトヴェングラーと3人でだ!!!馬車から降り、石だたみの路地を3人で歩いて行き、しばらくしてとある古い建物の中へ。そこは300人位の小さな劇場。客席の真中で、両巨匠が「昔我々は、この小さな劇場から、次第に大きな町、
大きな劇場へと渡っていった。

 2人は昔をなつかしむように舞台を見つめていた。その間に2人に肩をかかえてもらって俺がたっている!!

 夢とはいえ何と至福な時間だったことか!!

 次の瞬間入口からドヤドヤと観光客の一団が入って来た。1人のおばさんが

 「すみません、写真撮ってもらえます〜?」
 「この方々を誰だと思ってるのですか!!まずこの3人を撮ってください!」とさけんだ時に夢は終ってしまった!
 あの観光客さえ入ってこなければ、その後どんな話をしてくれたのかと思うと・・・・・!!

 どこにでも出没するのよ無神経な観光客!!
俺の夢の中にまで踏み込んで来るな〜!!!!


 相変わらず、首には銅鉄!左右にかすかに動くようになったが、上下はダメ!

 今日のリハビリはうきうき気分でのり込んだ。
例のごとく何人かがリハビリに取り組んでいる。
俺もその中の一人として参加。足に重りをまかれて、平行棒へ。ンッ!何か昨日より重いぞ!!
さわやか体操のお兄さん風堂前先生が、みえみえのニヤ笑いをうかべて、
「同じ同じ!」
バランス運動も、より不安定にスポンジ2枚に増されているし!!

 リハビリ途中、白石先生がやって来る。俺の姿見つけて、
 
 「どう?頑張ってる?」
 「ハイ!先生金曜日外出してもいいですかね〜?」
 
 思い切って聞いてみた。
 
 「どれどれ傷見せて。」
 
 貼ってあった首のばんそうこうをビリッとはがして、
 
「あっもういいね〜!風呂も入っていいよ。」

 となりにいた堂前先生に向って、

 「この人もともと症状なかったもん!ここにいるより、ピアノ弾いて来たいんだよな〜。」

 「いいよ明日にでも帰っておいで。でももう、いる必要もないし、退院してもいいよ!」

 俺も単純なのか、リハビリが終った後、首の鋼鉄がただの鋼板に変わった! 動きも朝より確実にいい!

 信頼する先生の一言というのはこんなにも気持ちを軽くし、かつ体も動かしてしまうのか・・・

 一番うれしいのは風呂に入れる!!ということかも。

 8/17(木)
 昨夜は、退院できることと何より今日風呂に入れることがうれしく、まるでスキーに行く前日のごとく眠れなかった!

 午後8日振りの風呂!!3回も頭を洗いきれいさっぱり身も心も軽くなった!!

これで場上がりのビールがあったらいうことなし・・・だが・・・・!!


  8/18 (金)
 今日は久しぶりの自宅へ。外出許可もおり、リハビリ最大目標のピアノ!9時お向いの東山さんが迎えに来てくれて、いざ出発!

 車が走り出すと・・・うっ!以外とつらい!わずかな揺れでも首肩に力が入る。かなり慎重に運転してくれているのに・・・・

 うちに着いて、整理した後ピアノへ向う。
 
 右手中指に多少痛みが残っているものの、ふつうに 弾けている!首が下向けないから鍵盤が見えないものの、腕・手・ほぼ何も問題はない。

 もちろん10日以上弾いていなかったから手の平の筋力は多少落ちているが・・・

 次のリハビリはレッスン、この後2人の弟子が来る。

 彼女達の音をきちんと聴き分けることができるか・・・?

 四時前にレッスンは終わり再び東山さんに病院へ送ってもらう。

 やはり頼りになるのは遠い親戚より近くのご近所さま!

 東山さんいつもおいしいお惣菜ありがとう!今日の送迎ありがとう!!

 夜ベットでながめた自分の足、筋肉が削げ落ちハリのないこんにゃくの様だ!

 8/19〜20
 特に変わりなし土曜はリハビリもなく、この手術記を書くことに専念しよう!

 日に日に回復しているようだ。昨日から脚力強化に毎回階段を使っている。この6Fから一気に1Fへ。

 体重が4kg落ちた!高目の血糖値を下げる意味でも、60kg代キープ!食後の運動持続!
ガンの次になりたくない病気・・・糖尿病!
退院前に栄養指導しっかり受けて、今まで以上に節制しなければ!


  8/21 (月
 昨日から、現実的血糖値チェックの為、看護師さんには怒られているが、消灯後10時すぎにサンドイッチ1個食べてみたり、3時のおやつを少し食べてみたり、色々なパターンでチェック。こんなこと入院中でないとできないからねー

 結局1.600kcal 以上を食べると運動してもやはり、やや高めの数値がでてる!!
う〜〜ん これは糖尿にならない為には、かなりの節制が必要だ!!

 午後栄養指導。思っていたほど厳しくはなかったものの、月1回程度の「好きなもの好きなだけ」をやるには、残り29日徹底的なコントロール!!

 8/22 (火)
 晴れて退院!!

 いざ退院の日を向えると、何だかなごりおしい気もしてくるから不思議!
そりゃー毎日、若い看護師さんに優しく声をかけられ、色々お世話してもらいましたから・・・

ひそかに・・・彼女にするなら○○さん、恋人なら△△さん、妻にするなら□□さん、側室にするなら××さん

 ・・・・な〜んて楽しんでましたからね〜

 でも皆さん本当にお世話になりました!!
毎日右手の中指と、両腕のこりを取ろうと、ストレッチをしてくれたリハビリの皆川先生、お世話になりました。
昨日リハビリ中おみえになり、「今後絶対に頚椎から来る症状は出ないはずです!」
と太鼓判を押してくださった白石先生、本当にありがとうございました。

最後に、お忙しい中わざわざお見舞いに来てくださった

 金亀 高橋さん
 あそぼう会 丸先生
 江戸混 堀井さん、長谷川さん、浅井さん、佐々木さん
 二之江ソフトの 有馬監督ご夫妻、藤巻さん、奥山さん
 弟子の岩田さん
そして沢山の暖かい励ましメールをくださった皆さん。
       本当にありがとうございました。


 今回の手術入院の体験を通し、「病は気から」を痛感した。
 入院中何人もの患者さんと話をしたが、ほとんど全員が、精神的ダメージを受けている。
 回復しない自分の体にいら立ち 看護士さんにあたる人、患者同士、いかに自分がつらいかを愚痴り合っている人達、治らないことに自暴自棄になっている人・・・・etc
 
 外科的・内科的治療の後のメンタル治療、実はこれが一番、やっかいで、長くかかるものなのではないだろうか・・?


『手術記』
-‥-頸髄症〜第四、五、六番頸椎拡張手術を体験して-‥-


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